「出版関連産業経営動向調査」から見えてくること 綴木猛 (2015年12月4日)

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■出版経営研究部会 発表要旨(2015年12月4日)


「出版関連産業経営動向調査」から見えてくること


綴木 猛
(株式会社帝国データバンク東京支社情報部情報取材編集課副主任)


 帝国データバンクの企業概要ファイル「COSMOS2」(収録件数146万社)から出版社,出版取次業者,書店経営業者を抽出して,2013年度と5年前の2008年度の売上高や損益状況等と比較しながら分析する。
 (注,帝国データバンクは,2013年度の出版社数1285,出版取次業者数532,書店経営業者数855とする。企業倒産集計は負債額1000万円以上の法的整理による倒産。出版科学研究所『出版指標年報』と調査方法,カウント方法等が異なることに注意,ちなみに,「商業統計表平成26年」平成28年3月9日公表は,書籍・雑誌卸売業数844,従業者数14,290,年間商品販売額1兆9,486億円,書籍・雑誌小売業数8,169,従業者数77,155,年間商品販売額1兆1,492億円,売場面積2,646,578平方メートル,とする.)
 全国企業の「倒産件数」は,2015年度上半期はリーマンショック以降最少であった。一方,出版関連産業の「倒産件数」は,現在は12月であるため2015年度の数値がまだ確定していないもののすでに出版業界38・出版業32で,前年度を上回っている(過去15年間の倒産件数の最高は2009年)。「休廃業,解散件数」は出版業界93・出版業28。
 次に売上高。2013年度の出版業界全体の総売上高は約5兆997億円(出版社約1兆9617億円,出版取次業者約1兆7958億円,書店経営業者約1兆3422億円)。2008年度は約6兆3495億7500万円であり,19.7%減,金額で約1兆2500億円減となった。減少率は出版社24.3%,出版取次業者15.1%,書店経営業者18.3%。
 黒字企業の構成比は,2013年度が,出版社40.9%,出版取次業者34.8%,書店経営業者28.1%。いずれもが減少基調で今後のさらなる収益悪化が懸念される。
 損益状況は,2008年度と利益比較が可能な企業1327社を見ると,増益企業の割合(増益企業比率)は44.0%。うち出版社は46.6%,出版取次業者は44.9%,書店経営業者38.8%。減益企業の割合(減益企業比率)は56.0%。これを年商規模で見ると「50億円以上」減益企業比率43.1%,「10億~50億円未満」同53.0%,「10億円未満」同58.5%であり,年商規模が小さくなるにつれ利益確保が困難である。なお個々の企業の5年間を見ていくと,大手出版社8社(集英社,講談社,小学館,KADOKAWA等)はすべて増益である。社有不動産の売却や不採算部門の見直しなどリストラを図ることで収益性が高まり利益体質に変わっている。しかし大半の出版業者は収益確保が困難な様子がうかがえる。
 電子書籍の擡頭,活字離れ,ヒット商品の少なさが指摘されているなか,出版関連業者の総売上高は5年間で約1兆2500億円減少した。出版業界を取り巻く環境は大きく変化した。日本の出版流通ビジネスモデルの限界も指摘されている。
 大手企業はこうした変化をビジネスチャンスと捉えデジタルコンテンツの充実を図るなど対策を立てている。しかし大半の出版業者,そして出版取次業者,書店経営業者は厳しい経営環境を強いられている。倒産件数も増加しており,今後も出版業界は厳しい環境が続くことが予想される。
(文責:木下修)