日本の書店の現状と課題  高須博久 (2006年9月14日)

出版経営研究部会   発表要旨 (2006年9月14日)

日書連『全国小売書店経営実態調査報告書』からみた
日本の書店の現状と課題

高須博久 

 日本書店商業組合連合会が今年5月に発表した『全国小売書店経営実態調査報告書』は,中小書店の経営実態を如実に示す内容である。報告書をとりまとめた書店経営実態調査特別委員会の高須博久委員長は,これまで10年おきに実施してきた実態調査を前回調査から6年で実施したのは,組合員激減(最盛期の半数)の原因を知るためだったとし,回答者の要望に粗利益の確保,客注品の迅速化,適正配本という20年前と同じ内容が並んでいると現状を報告した。出版社の立場で参加した昭和図書の大竹靖夫社長は,書店の粗利益率を改善するために取引制度の見直しが必用との認識を示し,出版物にICタグを挿入することで,これまでできなかった同一商品複数条件が可能になり,注文品と新刊委託では別条件を設定するなどリスクに応じた取引制度が必用だなどと報告した。木下修部会長は日本では書店のマージンが主要諸外国に比べて低いと報告。経営上重要な回転差資金を得るために,日書連は小規模書店で販売比率の高い雑誌の支払いサイト改善に取り組むべきだと指摘した。永井祥一会員は日書連活動の問題点をあげ,書店でのポイントサービスや古書併売などにも柔軟に対応する必用があると指摘。星野渉会員は米国書店組合(ABA)の事例から,日書連が中小書店の利益代表であることを明確にし,事業収入の確保と組合員への教育の必要性を指摘した。討論では10月に日書連が実施する買切,事前受注,高マージンの実験「新販売システム」についても賛否の両論が開陳された。
(文責:星野 渉)