明治大学文学部における出版関係科目教育 相良 剛 (2014年11月17日)

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■出版教育研究部会 発表要旨(2014年11月17日)


明治大学文学部における出版関係科目教育
――その内容と見えてきたもの


相良 剛
(明治大学文学部文学科文芸メディア専攻専任講師)


 明治大学文学部において報告者が担当している出版関係の4科目――①「表現・創作I」,②「出版印刷研究」,③「編集・企画」,④「DTP」について報告した。
 ①は,文学科文芸メディア専攻学生の必修の演習科目で,毎年度3~4クラス設置される。各クラス(20名前後)ごとに異なる教員が,各自の専門領域を土台に内容を構成しているものである。報告者のクラスは,出版の過程を意識した内容で実施しているので今回の報告に含めた。小説や批評の実作を中心に,履修者の草稿に報告者がコメント(疑問点や修正案など)を付し,履修者がそれを取捨選択して原稿に仕上げる過程で,擬似的に〈編集者〉と〈作家〉の関係を体験させようと試みている。また,その作品集を実際の製本方式に近い形で作成し,作業の一部を履修者に分担している。
 ②は,文学部学生の選択科目で毎年度150名前後が履修。出版産業論を中心に講じている。販売額の変遷などを各種データで示しながら,同時に出版といういとなみの多様性を,出版物の内容・形態,かかわる職種や組織,業界特有の制度,用いられる技術などの各側面から示し,最後に電子出版への流れが,どのような影響を与えるか展望する。
 ③は,出版物(書籍と雑誌)が実際にどのように企画,編集されて出来あがっているのかを,小課題などの模擬的な作業と,文献・映像資料を使いながら示す。報告者自身の出版実務経験も内容とするが,ほかの様々な編集者の手記類も援用して,相対化するよう努めている。履修者資格は②と同じで,9割の者は両方を履修している。
 ④は,雑誌と書籍の誌面(タテ組み)を,Adobe InDesign と Photoshopを用いて作成する。コンピュータを用いた文学部生のための選択の実習科目である。誌面を自ら作成することによって,日頃気付いていない,レイアウトの定石を意識化できるように狙っている。
 これらの科目の履修者の中から,毎年度数名が出版社に就職しているが,それは結果であり,目的ではない。履修動機の大半は,出版物への一般的・全体的な興味であることがアンケートからわかっている。報告者としては,履修者の,出版物の位置づけや,編集の手つき,デザインなどについての批評能力が高まることを期待している。手をかけて作られた出版物を正当に評価できる読者層の拡充が,出版のいとなみの維持・発展に不可欠と考えている。
 履修者が文学部学生のためか,①は2004年度,②から④は2006年度の開講以来,一貫して出版への関心は高いように見える。2010年以来の「電子出版」ブームの中でも紙への愛着を表明する学生が多い。ただ,実物の本への興味は若干薄れてきているかもしれない。教室に持ち込んだ出版物の実物を,講義終了後に手にとる履修者は少なくなった。また,③の課題として雑誌のインタビューの想定企画書作成を課しているが,タレントやミュージシャン,俳優などの人選とファッション誌,音楽誌との取り合わせが多数を占め,小説家は数名,文芸誌に至っては,1誌名前が挙がるかどうかである。文学部生といえども現代の若者の一部として生きている以上,驚くべきではないのかもしれない。
*部会参加者15名(会員12名,非会員3名,於日本大学法学部本館152講堂)
(文責:相良 剛)