江藤淳没後20年 昭和と平成の批評 平山周吉・與那覇潤・金志映・酒井信 (2019年7月21日開催)

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■ 出版教育研究部会 開催要旨 (2019年7月21日開催)


江藤淳没後20年 昭和と平成の批評――江藤淳は甦える


 平山周吉 (文筆家、元文藝春秋編集者)
 與那覇潤 (歴史学者)
 金 志映 (ソウル大学)
 酒井 信 (文教大学)


 江藤淳は20年前の平成11年(1999年)7月21日、66歳で亡くなった。本研究報告は、4人の登壇者による発表とディスカッションの形式を採り、昭和と平成の両時代に跨がって批評を展開した江藤淳の業績について再考した。なお登壇者のうち3人は平成期に義務教育を終えた若手研究者であり、河出書房新社から2019年5月に刊行された『江藤淳』に、それぞれの専門分野の知見を踏まえた論考を寄稿している。
 平山周吉は1952年東京生まれの雑文家で、慶應義塾大学文学部国文科を卒業後、文藝春秋社で雑誌、書籍の編集に従事し、「文學界」「諸君!」で編集長を務めた経験を持つ。江藤淳が自決した日に鎌倉で面会した最後の編集者ということもあり、2019年4月に『江藤淳は甦える』(新潮社)を刊行。ノンフィクションとも伝記文学とも週刊文春的とも言える文体で、江藤の人生に付随する数々の「謎」を丹念に解き明かし、「江藤淳は甦えるか――「生き埋め」と矮小化の後に」と題した発表でもその成果について言及した。
 與那覇潤は1979年横浜生まれの歴史学者で、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了し、2011年の『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春秋)で注目を集めた。「西洋化」の概念抜きで専門の日本近代史を描きなおす試みは、欧米化ではない近代化の道を模索した江藤淳の史論とも重なる。近著『知性は死なない 平成の鬱をこえて』(同)でも随所で江藤をとりあげ、その感性が戦後の日本で持った意味に触れた経緯から、「日本史家としてみた江藤淳」と題した発表でも過去の研究成果について言及した。
 金志映は1982年ソウル生まれの比較文学者で、延世大学校を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科博士課程を修了し、現在は、ソウル大学の日本研究所で研究員を務めている。ロックフェラー財団に招聘された戦後の日本の文学者の米国体験に着目し、2019年に『日本文学の〈戦後〉と変奏される〈アメリカ〉』を刊行した経緯から、「アメリカとの関係からみた江藤淳」と題した発表を行った。
 酒井信は1977年長崎生まれの文芸批評家で、早稲田大学を卒業後、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科で、江藤淳の弟子にあたる福田和也の指導を受けた。現在は文芸誌や論壇誌に批評文を執筆しながら、文教大学情報学部で准教授を務め、「文芸批評家としてみた江藤淳」と題した発表を行った。
 パネル・ディスカッションでは、江藤の血統が、近代皇室の血統と重なった令和の現代から見る、江藤の批評の価値とは何だろうか、という問題提起の元で発表と議論を行った。第126代天皇の皇后・雅子は、江藤淳(本名・江頭淳夫)の祖父・江頭安太郎(海軍中将)の曾孫にあたる。江藤淳の没後20年の節目に、多くの一般来場者に関心を頂き、活発な質疑応答もあり、登壇者たちの発表と議論を通して、江藤の批評について再考することができたと考える。


日 時: 2019年7月21日(日) 午後2時~4時30分
会 場: 専修大学神田キャンパス5号館7階
参加者: 113名 (会員5名、一般88名、学生20名)

(文責:酒井 信)