進む理科離れに警鐘  ・大沼清仁 (2003年7月25日)

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 雑誌部会・デジタル出版部会   発表要旨 (2003年7月25日)

進む理科離れに警鐘

 日本出版学会(植田康夫会長)雑誌部会とデジタル出版部会は7月25日,東京・神田錦町の東京電機大学で「我が国の科学雑誌に関する調査」をテーマに合同部会を開いた.講師の文部科学省科学技術政策研究所上席研究官・大沼清仁氏は,科学技術を伝えるメディアの一つである科学雑誌の休刊が相次いでいるが,科学雑誌の置かれている現状について伝える情報が少ないことから,一般向けの科学雑誌について1970年以降の発行部数などを調査し,国民の科学技術に対する関心と科学雑誌との関係について考察した結果を解説した.以下にその概要を述べる.
 今回の調査に当たっては,「出版指標年報」(全国出版協会・出版科学研究所),「雑誌公査レポート」(日本ABC協会),「雑誌新聞総かたろぐ」(メディア・リサーチ・センター)など,公表されている出版関係の資料を主に使用した.その結果,発行部数は一般向け科学雑誌の創刊ラッシュがあった1983年の約1,262万部をピークに減少を続けており,2001年には約415万部と3分の1まで減少していることがわかった.
 一方,読者層については「日経サイエンス」(日経サイエンス社)が行った購読者に関する調査をもとにその変化を調べた.1979年の時点では,10~20歳代の合計が40%,30歳代が28%と若年層の読者が多かったが,2000年では10~30歳代を合わせても44%に減少,一方で50歳代は1979年の19%から2000年の33%へと増加するなど,読者層の高齢化が進んでいることがわかった.
 また,自然科学系研究者,学部学生,大学院生の総数を見たとき,1980年の90万人から2001年には154万人と1.5倍以上に増加しているにもかかわらず,一般科学雑誌の部数が減少していることは,若手研究者の科学全般への関心の低下,専門以外の分野への関心の低下に関連があると考えられる.
 今後の課題と対策として,小中学校段階での理科好きの維持,科学ジャーナリストやライター,解説員といった科学情報を伝達する媒介者の育成と確保,科学技術理解増進に関する活動への研究者や技術者の参画,大学,研究所など情報を発信する側の広報体制の整備,インターネットを通じた科学技術情報の発信,などを進めていくことが重要である.
(上田 宙)