出版メディアと「アイドル」:1980年代以降の動向を中心に 田島悠来 (2017年9月21日開催)

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■日本出版学会 関西部会 2017年度第3回(通算第101回)開催要旨(2017年9月21日開催)


出版メディアと「アイドル」:1980年代以降の動向を中心に


田島悠来 (会員、同志社大学)


 2017年3月に『「アイドル」のメディア史――『明星』とヤングの70年代』(森話社)を上梓した同志社大学の田島悠来会員を報告者に、江戸川大学の清水一彦会員を質問者にして、1980年代以降を軸に、出版メディアと「アイドル」をめぐる動向について検討を行った。

【田島氏の報告】
 出版メディアと「アイドル」について着眼するにあたり、(1)「アイドル」文化の黎明期(1970年代)、(2)「アイドルらしさ」の確立期(1980年代)、(3)「アイドル冬の時代」からの過渡期(1990年代~2000年代)、(4)「アイドル」文化の成熟期(2010年代以降)という四つの時代区分を設け、それぞれの時期ごとの特徴を整理した。なかでも、第二区分の1980年代には、「アイドル」であることの型(プロトタイプ)=「アイドルらしさ」が確立、言い換えれば「アイドル」のステレオタイプ化が進行し、同時に、出版メディアの動向に目を向けると、「アイドル誌」が、広く学校に通う年代の男女の若者が共存したメディア空間のなかで親しまれるものから、ジェンダーによってセグメント化され受容されるものへと、また、熱狂的かつマニアックなファンに親しまれるものへと次第に変貌した様子を指摘した。
  一方、黎明期のメディア表象で紡がれた「土着性」という物語は、第四区分の2010年代以降、地域に密着した活動をおこなう「ご当地アイドル」において継承され、ローカルメディアとの結びつきのなかに出版メディアと「アイドル」との現代的な関わり方の可能性を提示した。

【清水氏の質問および会場の質疑応答】
 質問者の清水一彦氏は1983年にマガジンハウス(当時平凡出版)に入社、『平凡』編集部所属ではないものの、田島氏の分析対象である『明星/Myojo』を大きな存在として意識していた。集英社の編集者の特徴は、芸能界やファッションの情報を読者に届ける媒介者として活動する点にあり、『明星』の読者ページの「明星アニキ」はその典型と語る。『明星/Myojo』がアイドルとの関係性を、時代に合わせて変えながら現在も出版されているのもそうした編集文化の違いと指摘した。また文化産業とは文化を商材すると産業であり、出版の現場が「売れる」という視点を突き詰めていく中で、研究者が「ジェンダー」「土着性」などを意識化し掬い上げるのであって、編集の現場を踏まえた分析も大切と述べた。
 質疑応答では、「アイドル」がもつ土着性と様々なタイプへと派生する「アイドル」について情報交換がなされ、出版をはじめとするメディアがどのような役割を果たしているかが議論された。

日時: 2017年9月21日(木) 18時00分~20時00分
会場: 大阪府立江之子島文化芸術創造センターenoco ルーム6(B1F)
参加者: 12名(会員7名、一般5名)

(文責:中村健)