『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』を踏まえて 飯野勝則 (2016年4月25日)

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■関西部会 発表要旨(2016年4月25日)


『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』を踏まえて


飯野勝則
(佛教大学図書館)


 現在の大学図書館においては、従来からの紙の図書や雑誌に加え、さまざまなデータベースや電子ジャーナル、電子ブックといった「電子コンテンツ」が提供されている。こうした状況下で、形態の異なるコンテンツの所在や全文情報を効率よく「発見」できるツールとして、近年ウェブスケールディスカバリーと称される、クラウドベースで提供される統合検索サービスの存在感が高まりつつある。
 このサービスに収録されている検索用のレコードは、自館作成のものを除き、「電子コンテンツ」を提供するベンダーや出版社から、あらかじめ提供されたものであり、Googleと同様に中央のサーバでインデックス化されている。すなわち各大学図書館は、クラウドの特性を生かし、この「セントラルインデックス」を検索先として共有することで、効率的で強力な検索機能を利用することができるのである。
 ウェブスケールディスカバリーは、電子ブックに対する親和性が非常に高く、欧米の出版社ではこの点について理解が進んでいる。例えば、電子ブックについては、出版社から図書という単位での検索用レコードが準備されていることに加え、そこに含まれる章ごとのレコードも提供されている。それゆえ、利用者は自らが必要とする部分のみを的確に探し出し、閲覧することが可能となっている。そのほか、より強力な検索用インデックス構築を目的として、図書全体や章単位での全文テキストが提供される場合もある。一方で日本の出版社がウェブスケールディスカバリーに対して、ここまで丁寧な電子ブックのレコード提供を行っているという話は寡聞にして知らない。
 このような日本の現状は、海外における日本文化の発信という点で、かなりのマイナスである。実のところ、海外においては、日本研究を志す多くの学生や研究者が、各所属機関で提供されるウェブスケールディスカバリーを通じて情報探索を行っている。ところが、現状日本語の検索用レコードが十分でないため、「枕草子」と検索しても、検索結果の上位が中国語のレコードで占められるという状況すら生じているのだ。
 あるいは、ウェブスケールディスカバリーの日本語検索用レコードについては、図書館と出版社が協力して、適切な水準で流通させていく体制を、積極的に構築すべき段階に来ているのかもしれない。

(本発表は2016年1月に上梓した拙著『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』をもとに、幾分かのアレンジを加えたものである)
(文責:飯野勝則)