出版史研究の手法を討議するその6:ライトノベルへのアプローチ (2016年3月12日)

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■関西部会 発表要旨(2016年3月12日)


出版史研究の手法を討議するその6
:ライトノベルへのアプローチ――研究の現状と今後の展望について


報告者:山中智省(滋賀文教短期大学)
討議者:中川裕美(愛知教育大学)
質問者:村木美紀(同志社女子大学)


報告
 ワークショップ形式でライトノベルをテーマに山中智省会員の報告をもとに中川裕美会員、村木美紀会員が討議を行った。フロアからは「ライトノベルの刊行形態から「図書の雑誌化」という流れの中の事象」という視点が提示されるなど、出版研究の視点をめぐって活発な討議が交わされた。各氏の報告と質問内容は次の通り。
(中村 健)

報告者要旨:山中智省
 若年層向けのエンターテインメント小説として知られるライトノベルは、現代小説の一ジャンルであると同時に、複数のジャンル・メディア・文化の要素を兼ね備えた「複合的な文化現象」と言える。2000年代に到来した一連のブーム以降、新興の文芸ジャンルとして急速に注目を集めたライトノベルは、アカデミックな研究の場でも徐々に扱われ始め、これまでに数々の成果が生み出されてきた。しかしながら、今なおライトノベルは未知な部分の多い研究対象であり、「複合的な文化現象」ゆえにその全容把握は容易ではない。また、複数の文化と関わるライトノベルに対しては、多種多様な研究領域からアプローチが可能であるぶん、研究者は研究の目的・視点・方法を明確化しておく必要がある。そこで本報告は、まず近年のライトノベルをめぐる状況を様々な資料から整理し、「複合的な文化現象」たるライトノベルの一端を把握できるような情報提供を行った。その上で、報告者が取り組んできた/いるライトノベル研究の実践例を踏まえながら、注目すべき近年の事象、及び具体的な調査・分析方法に関する問題提起を行い、出版史研究を舞台とした研究の可能性を議論するための足掛かりとした。
(山中智省)

報告者に対する討議者のテーマ:中川裕美
 第一に、ライトノベル史研究が、これまで出版史研究の枠組みの中に明確に位置づけられていないのではないかということ。第二に、これまでのライトノベルに関する研究では、研究者の読書体験に影響される傾向が強いということ。第三に、研究者が極めて少なかった結果、一部の研究者による枠組みや視点が突出したということ。
(中川裕美)

報告者に対する質問者のテーマ:村木美紀
 図書館資料としてのライトノベル、ヤングアダルト向けの読書材としての視点からの質問と補足を行い、イラストの傾向――マンガ絵とアニメ絵、萌え絵――について言及した。(村木美紀)

*肩書は部会開催時のもの