書字の論理/活字の論理 鈴木広光 (2015年6月26日)

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■関西部会 発表要旨(2015年6月26日)


書字の論理/活字の論理


報告者:鈴木広光(奈良女子大学研究院人文科学系)
聴き手:中西秀彦(中西印刷)


 鈴木氏は『日本語活字印刷史』で,日本の漢字と仮名による多様な書字活動が,活字の規格による制約や鋳造活字に内在する論理とのせめぎ合いのなかでどのように活字化されたのかを,技術面だけでなく,文字の性質や書記様式,コミュニケーションのあり方も視野に入れて論じた。そして多種多様なものを統一する,無定型なもの混沌としたものを一定の規則に従わせる,という意味のREDUCIR(レドゥシール)の論理を用いて日本における活字の変化を説明する。
 報告では,スライドを多用しながら,嵯峨本など古活字版や明治初期の活版印刷物が,論理の異なる写本や板本の書記様式をどのように再現したのかを説明した。
 古活字版の連続活字は,写本を再現するための特別な発明工夫のように言われることが多いが,文字の体系的把握に基づく,整備合理化(文字の抽象化)の所産で,この技術の初期段階においては,写本の書記様式がそのまま活字によって再現されているが,これはほかに選択肢がなかったからに過ぎず,写本の書記様式に求めるほかなかった,と考える。
 明治になって活字印刷が再び盛んになってきてからも,写本や手書きの風合いを求めるため明朝体活字と仮名活字を組み合わせる試行錯誤が続く。例えば,なぜ,続き仮名は普及しなかったのか?という疑問について,鈴木氏は,続き仮名が産み出す均質的な文字のすがたと合理的で洗練された版面が,その理由と述べる。
 このような,活字印刷の均質性と日本語における多様な手書き表現の風合いを表現するせめぎ合いに,冒頭のREDUCIR(レドゥシール)の論理が見出されるのであった。
 報告後は中西秀彦会員が聞き手となり質疑応答がかわされた。
*なお,当日配布された中西秀彦会員の書評は,関西部会臨時増刊に掲載している。
 (http://www.shuppan.jp/bukai13/692-reducir.html
(文責:中村 健)