大学教育における電子教科書の現状と課題 岡田憲明 (2018年7月31日開催)

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■ 学術出版研究部会 開催要旨 (2018年7月31日開催)


大学教育における電子教科書の現状と課題
――北米大学視察報告と大学生協の考える電子教科書


岡田憲明 (全国大学生協連専務理事スタッフ)


 大学生協は大学と出版の両方に軸足を置きながら研究と教育の変化を市場のなかから捉えている。本部会では大学のなかのデジタル事業にフォーカスした講演会を開催した。

 まずは2017年冬に視察に訪れた北米カリフォルニア州のUCデイビス校の電子教科書利用実態調査の説明をうけた。同校ではLMS(Learning Management System〈学習管理運営システム〉)に電子教科書を搭載することにより、①シングルサインオンによるシンプルなアクセスが可能、②授業初日から学生は教科書を利用することができる、③宿題などがオンラインでできるので教員は授業に集中できる、④学生のログにより教員は理解度を計ることが可能となる、などの利点が生まれた。すなわち単に紙が電子に置き換わっただけではなく、新しい価値が付与されたことによって、デジタル化が普及したということは、こうした点からもわかる。またその背景には北米出版社の資本力にあるが、事業を担ったブックセンターを大学が直接経営しているという点も大きい。大学経営そのものが教育のデジタルシフトを実現させるために教科書のデジタル化事業を牽引したのである。

 次いで、報告は大学生協の電子化事業に移った。毎年、大学生協連は学生の読書時間調査を行い、HPで公表している。それによると読書時間は年々減り続け、2017年には過半数の学生が一日の読書時間を「ゼロ」と回答したという。マスコミでもにぎわせたこの結果を踏まえて、大学生協連は現在、デジタル技術の活用しながら魅力的な読書の機会を提供することを模索している。そのひとつとして、自主的に学ぶ道具としての電子書籍を想定し、マーカーや付箋、コメントの共有などで、どこでも、いつでも読書会ができる「デジタル読書会」を構想しているとして、講演を締めくくった。

 参加者を交えた討論では、生協の提供する電子教科書システムと学内のLMSとの連携についての質問など、活発な議論が行われた。


日時: 2018年7月31日(火) 午後6時30分~8時30分
場所: 専修大学神田キャンパス 7号館大学院771教室  
参加者: 37名(会員12名、非会員25名)

(文責:橋元博樹)